オーストラリア年度末の所得税申告

タックス・リターン(TAX RETURN)をしよう!

タックス・リターンとは日本でいうところの所得税の確定申告です。対象者には留学生やワーキングホリデーメーカーも含まれます。「タックス・リターンをするとお金が戻ってくる!」という都合のいい話だけが蔓延しがちなタックス・リターンについてご案内します。

タックス・リターン(TAX RETURN)とは?



オーストラリアの会計年度は7月1日から翌年の6月30日までです。この期間の収入や支出について所得税に関する申告を原則10月31日まで(登録税理士に依頼する場合は翌年の5月15日まで)に行わなくてはなりません。多くの場合、源泉徴収されていた税金の一部が戻ってくるので、税金の還付手続き(Tax Refund)と思われがちですが、「Return」とは税金が戻ってくるという意味ではなく、「申告をする」という意味なのです。

タックス・リターン(TAX RETURN)をすべきか確認しよう!

留学生の皆さんを含めアルバイトなどをして収入を得ている場合、多くがこのTax Returnの対象となります。自分がTax Returnを行うべきかどうかわからない場合は登録税理士に確認しましょう。

また、税率やタックス・リターンの条件は「税法上の居住者」「税法上の非居住者」「ワーキングホリデービザ滞在者」のどれに該当するかによって異なります。自分のステイタスが不明な場合も登録税理士に確認しましょう。国税局(ATO = Australian Tax Office)とのトラブルを避けるためにも、自己判断は禁物です。

ワーキングホリデービザ滞在者の場合

ワーキングホリデービザ滞在者の税法上のステイタスにかかわらず、所得税率はワーキングホリデー独自の税率表が適用されます。「雇用主がワーキングボリデー関連の登録をしておらず、非居住者の税率で源泉徴収されているため調整したい」「年収が$45,001を超えている」「給与収入以外の収入がある」など特別な場合を除いてはタックス・リターン及びNon-Lodgement Adviceは不要です。

雇用主がワーキングホリデーの人を雇用するための登録をしていない場合は、税法上の非居住者として所得税が引かれますので、手取りは少なくなります。この多く引かれてしまった分はタックス・リターンを行うことで調整することができます。
2021年12月17日に、日本を含むa non-discrimination article (NDA) countryのワーキングホリデービザ保有者については、その他の条件が”居住者”に該当する場合、”居住者”の税率とする旨の発表がありましたが、ほとんどのワーキングホリデーメーカーは”税法上の居住者”には該当しません。(ブログ『【ワーキングホリデーのタックス・リターン】税法上の居住者とは誰?』をご参照ください。)
詳細:Working holiday makers

学生ビザ滞在者の場合

6ヶ月未満のコースを受講する学生ビザの方は「非居住者」、6ヶ月以上のコースを受講する学生ビザの方は「居住者」扱いとなります。

なお、源泉徴収(給与から予め差し引かれる所得税)は税率表通りの金額ではありません。Tax Return(確定申告)により税率表どおりの金額へ調整します。

また、会計年度内に収入がなかった方もNon-Lodgement Adviceという書類の提出が必要です。

タックス・リターン(TAX RETURN)の準備

必要な書類は次の3つです。

①Income StatementもしくはPAYG Payment Summary

Income Statement(インカムステイトメント)

雇用主がSingle Touch Payrollという方法で国税局に申告している場合、Income Statementという書類をオンラインで確認します。個人の場合はmyGOVから確認できます。myGOVを登録しない場合は国税局に電話して書類を送ってもらうことができます。また、登録税理士を利用してタックス・リターンを行う場合は、専用のオンラインサービスにより確認してもらうことが可能です。これは法律上雇用主は7月31日までに完了しなければならないことになっているので、この日を過ぎても確認できない場合は雇用主に問い合わせましょう。

PAYG Payment Summary(ペイメントサマリー)

雇用主がSingle Touch Payrollを国税局への申告に利用していない場合、PAYG Payment Summaryという書類を受領します。これは法律上7月14日までに発行しなければならないことになっているので、この日を過ぎても受領していない場合は雇用主に問い合わせましょう。

②仕事に関連した経費のレシート

法律で差し引くことが認められた仕事に関する支出(Deductable Expense)がある場合は、領収証などをまとめておきまましょう。この支出の内容は業種によって細かく定められており、法律にそっていない場合には是正勧告の対象になり、罰金を課せられることもあります。国税局とのトラブルを避けるため、確実でない場合には登録税理士に相談しましょう。

③その他の収入に関する書類

銀行利息など、その他申告を必要とする収入がある場合には、その書類も準備しましょう。

④Medicare Entitlement Statement

“税法上の居住者”ではあってもMedicare(国民健康保険)の対象とならない学生ビザなどを保有する場合には、Medicare Levy(健康保険料)の免除を受けるためにMedicare Entitlement Statementが必要です。こちらはメールで申請書を提出し、承認確認の書類を郵送で受け取ります。

タックス・リターン(TAX RETURN)の方法

申告の方法は大きく分けて下記の3つです。各雇用者や銀行など関係機関が所得税に関する情報が国税局に登録する期限が8月14日なので、8月末以降の申請が推奨されています。
①登録税理士に依頼する
②書類作成サービスを利用する(申告期間中ショッピングセンター等に臨時ブースが登場します)
③オンラインで自分で手続する
方法 こんな人にお奨め メリット デメリット
登録税理士に依頼
  • すでに帰国している or 近々帰国予定がある
  • 給与収入以外の収入がある
  • Deductable Expense(収入から差し引くことが認められた仕事に関する支出)がある
  • 申告期限を過ぎている
  • 英語にまったく自信がない
  • 日本人登録税理士・会計士も多く、日本語での対応が可能。
  • すでに帰国している場合に返戻金を直接日本の講座に振り込んでもらえる(条件については、各登録税理士・会計士にご確認ください)
  • 申告に問題があった場合の対応もスムーズ
  • 申告期限を過ぎていた場合も対応可能
  • オーストラリアから退去し、今後オーストラリアで収入を得る予定がない場合、早期の手続きが可能
  • 手数料A$100-150が必要
書類作成サービス
  • 英語での日常会話は問題ない
  • 書類作成に自信がない
  • 手数料は登録税理士などに比べるとやや安価(A$20-60)
  • ほとんどの場合、英語での対応
  • 申告に問題が合った場合、自分で対応しなければならない。
自分で手続き(オンライン)
  • 給与所得のみである
  • ある程度自分で対応できる英語力がある
  • 手数料がかからない
  • 申告に問題が合った場合、自分で対応しなければならない。
  • 英語での理解力がある程度必要。
源泉徴収された給与所得のみで差し引く経費がなく、ある程度英語で対応できる方はご自身でのオンライン申請が便利ですが、それ以外の方は国税局とのトラブルを避けるためにも登録税理士のご利用をお奨めしています。
オーストラリア留学センターではタックス・リターンのお手伝いはしておりません。タックス・リターンのオンライン申請の仕方などについてのお問い合わせには回答致しかねます。ご不明な点は、ATOもしくは登録税理士へご相談ください。

タックス・リファウンド(TAX Refund)

タックス・リターンが完了すると、2~4週間で Notice of Assessment という書類が届きます。これはあなたの申告が受理された旨の通知になります。本人証明書としても使える書類ですから大切に保管してください。所得税の還付がある場合、申告後2~4週間で指定した銀行口座に振り込まれます。逆に追加徴収がある場合はこのNotice of Assessmentが請求書も兼ねていますので、指示にそって支払をしましょう。

タックス・リターン(Tax Return)の注意点

個人の確定申告に問題があった場合、国税局は4年間過去に遡ってから是正勧告を行うことができます。このような是正勧告の書面は申告後1、2年経ってから送られてくるケースが多いようですので、申告に使用した書類は少なくとも4年間は保管しましょう。

こんな時どうする?

Income StatementまたはPAYG Payment Summaryが入手できない

Income Statementが確認できない場合、雇用主がSingle Touch Payrollを利用していない可能性があります。その場合はPAYG Payment Summaryを受領しましょう。

Income Statementが確認できず、何らかの理由でPAYG Payment Summaryも受領できない場合(退職の際にもめごとがあった、雇用主が廃業した等)は、タックス・リターンを登録税理士に依頼しましょう。登録税理士は国税局のデータベースにアクセスし、依頼があった顧客のデータを調べることができます。ただし、キャッシュジョブなど雇用者が法律で定められている源泉徴収を行っていないためIncome StatementやPAYG Payment Summaryがもらえない場合もあるので注意が必要です。

会計年度の途中で帰国する

タックス・リターンは原則、会計年度が終わる6月30日以降に行います。会計年度の途中で帰国する場合、次のいずれかの方法で申告することになります。
[通常の期間内に申告する]
オーストラリア国内での手続きと同じです。オンラインでも申告できます。しかし、すでにオーストラリア国内の銀行口座を閉じている場合、返戻金(Refund)の受け取りは小切手となり、換金には手数料が必要です。登録税理士に手続きを依頼した場合には、日本円に換金して日本の口座へ直接振り込んでもらえる場合もあります。
[早期申請する]
会計年度途中での申告は原則認められていません。しかし、申告期間前にオーストラリアを出国し、オーストラリアに戻る予定がない、かつ出国後にオーストラリアでの収入(銀行利息なども含む)がない等の場合は特例として早期申請が認められています。紙ベースでの申告のみで特別な書類も必要になりますので、どうしても早期申請が必要な場合は登録税理士へ依頼しましょう。

タックス・リターン(Tax Return)を忘れていた!

申告期限である10月31日まで(登録税理士に依頼する場合は翌年5月15日まで)に申告をしていない場合、もう申告できないというわけではありません。むしろ、一刻も早く申告する必要があります。知らないうちに罰金が課されていることもありますので、このような場合は登録税理士に手続きを依頼しましょう。

ATOから是正勧告が来た!

その書面は「是正勧告に対して意義があれば28日以内に対応するように」書かれています。つまり、何もしなければ「国税局のいうとおり」となり、追徴課税されてしまいます。放置せずに内容をよく読んで対応しましょう。